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ロック・ガーデン

 庭いじりを愛でる者たちにとって、カレル・チャペック著の『園芸家12カ月 』はバイブルと言える。その9月の章には次のように記されている。

 

― わたしは率直にすすめる。もし諸君の庭にひたいほどの斜面でも、テラスでもあったらロック・ガーデンをつくりたまえ。 ―

 

 バイブルに書かれているなら、造らねばならない。・・・と思い立ったのは約3年前。石と植物を購入したのは約1年前・・・。ようやく重い腰が持ち上がった。いや、芸術家たるものは、その気になったときにしか筆を持つべきではない・・・という事にしておこう。

 いざ造り始めると楽しい。何事もそうであるように、頭で創造するよりも、体を動かすことが重要なのだ。

 城壁などを造る石工は、積み上げるときに「石の声」を聞けという。土の斜面の前に石を広げて、じっと耳をすます。じーーーっと耳をすます。なにも聞こえん・・・。それでも、斜面や枕木が交差する角度に合わせて石を並べていると、「これしかない」と言わんばかりの石が現れる。植物は、昨年の夏に購入したまま放置されていたにもかかわらず、猛暑の夏と零下の冬を無事乗り越えた強者ばかりだ。足りない分は、どこから飛んできたのか、わが庭で勝手に自生しているセダム類を植える。

 なんだかんだで3時間弱で完成。わるくない出来だ。でも、なんだか人工的な感が否めない。しかし、バイブルは次のように語っている。

 

 ― やっと仕事が完成すると、最初頭のなかに描いていたローマンチックな山脈とは、どう見てもすこしちがった、ただのひと山の石くずにすぎないことを発見する。しかし、気にすることはすこしもない。一年たたないうちにそれらの石が、いちめんにきれいなみどりのクッションでおおわれ、そのなかに小さな花がキラキラかがやく、世にも美しい花壇にかわる。そのときのうれしさは何とも言えない。わたしはすすめる。是非ロック・ガーデンをつくりたまえ。 ―

 

 さすが庭の神は我々の心をお見通しだ。

Rock Garden Before
ビフォー
Rock Garden After
アフター